ドリッピングは「マーキング」みたいなもの、そこに自分が居た証。【アーティスト・菅 隆紀】

PLART編集部 2016.11.15
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11月15日号

photo by sugar-w.com

京都府庁旧本館の前に掲げられた菅さんの作品。
諸事情で、一週間の展示だったはずが5時間で撤去。

「写真撮れたから、全然いんですけどね」

そう笑って話すのはアーティスト菅隆紀さん。
ドリッピングを手法とし、数々の作品を生み出す菅さんのアトリエへお邪魔した。


※ドリッピングとは、水を多く含んだ絵の具を絵筆に染み込ませ、直接画用紙に絵筆で描くことをせず、絵筆から絵の具をしたたらせて画用紙に描く絵画描法のこと。


千葉県松戸にある閑静な住宅街。その一角にある公園横の路地を入ったところにある一軒家。

 ーーすごい物件ですね。

菅さん(以下、菅):「最初はもっとドン引くくらい汚かったんですよ。笑」と中へ案内してくれた。

菅さんのアトリエ
photo by naomi kakiuchi

改装された1階はアトリエ。2階を住居としている。
早速、菅さんにアーティストの道へ進んだきっかけをお聞きした。
高校までは出身地である長崎で育つ。


菅:「小学3年生くらいから、絵が好きでした。シャイだけど目立ちたい精神が人一倍ありましたね。
高校生の時から、絵描きとしてやっていきたいと思って画塾へ通ってました。
その当時あるコンクールで入選したが、業界の空気に馴染めなかった。また福岡で、リュック・タイマンス展の図録を観て、自分がやってる事が枠にハマった作品である事に気がつき、狭い世界で生きていくことに嫌気が指した。」と話す。
どこか違う場所へ行きたい」と目指した場所。
一浪して愛知県立芸術大学に合格。
恩師は現代アートの小西信之先生。
大学時代は、とにかくがむしゃらに作品を創り続けてた。大学を卒業後は関東へ。

菅:「大学3年の頃から、東京で活動をしていて繋がりもあったので、東京へいこうと思いました。
だけど、自分は東京へ来たつもりだったけど、そこは実は茨城でした。」と笑う。
取手のアトリエでは作品づくりに励み、東京ではあるギャラリーにて様々な活動に参加した。

東日本大震災の際は、スニーカーにペイティングをし東北へ支援。


そして2015年、単身オーストラリアへ。

菅:「初めは、逃げたんです。アートでやっていく事に限界を感じた。だけど、絵を描く技術はオリジナルじゃないと分かって、自分の生き方や表現だけでいいんだと思えた。結局作る事が自分だと思った。最後のチャンスだと思い、色んな活動をしていった結果、なんだかんだで繋がっていきました。」

「自分は寄生系アーティストです。」

菅:「作品は目立ちたい=壊す。派手。何かに勝つ。ということを意識してます。
モチーフに責任転嫁をする、そこにはモチーフのチョイスのセンスが問われる。
モチーフは複雑・重さがある。そのレイヤーに描いちゃうんです。」

千葉県銚子市に作品を持っていきゲリラで展示した作品。

こちらは、東京・浅草スカイツリーとのコラボ。
縦5メートル横3メートル60センチの大きさで展示。

photo by sugar-w.com

設営風景 photo by sugar-w.com

菅:「誰の手も入ってない場所に自分をマーキングする。
初めて自分がそこを縄張りしていく感覚。僕は寄生系ストリートアーティストですからね。
今一番やってみたいのは刑務所の中ですね。人間の生々しい空気を感じたい。
例えば、赤ずきんちゃん、白雪姫のように昔からある童話で描かれる人間の生々しさも同じで生と死や、正と負。アートもそう。紙一重。そこにしか創造がないんです。」

「オルタナティヴスペース Komagome Soko」
初めは一部のはずが 建物すべてが作品になった。

 

何かを残す人は枠を越えている。自分も枠を越えていきたい。

雨男なんですよー」という菅さん。

これまでどの作品も展示の際は雨らしい。
だけど、よく言えば雨もドロッピングの一部になる。ラッキーなんでは?と思った。

現在の寄生先の一つは、オフィス
マネックス証券が主催する現代アートのアワード「ART IN THE OFFICE」(※1)に選ばれ、
プレスルームでアート作品を制作した。

「Painting on the Kimono」
photo by monex

菅:「ビックリマンチョコで希少なカードが当たって、今なら運があると思って応募したら、
ART IN THE OFFICE を受賞したんですよ!」

今後について菅さんは・・・
「日本は海外に比べて、枠に入っている人が多いと思う。
だけど、何かを残す人は枠を越えている。自分も枠を越えていきたい。

菅さんが次に寄生するモチーフはなんだろう?と目が離せない。

 

kakite & kikite & photo by kakiuchi naomi  

(※1) 証券会社「マネックス証券」が社会文化活動の一環として2008年から主催しているプログラム。作品案を公募、選出した作家に賞金を授与し制作費を支援。オフィス内のプレスルームで一定期間展示する機会を提供するもの。運営協力:アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]


菅 隆紀  SUGA TAKANORI
suga_takanori

1985年長崎県生まれ。2009年愛知県立芸術大学卒業。 人間の根源にある行為や欲求をテーマに、絵画的技法を用いて表現している。 2014年、オーストラリアを放浪中にアボリジニ文化に影響を受け、出会った老人の古民家にて滞在制作を行う。 これまでに、KOSHIKI ART EXHIBITION 2012(2012年、鹿児島)、 ドリッピンクプロジェクト(2013年、京都府庁旧本館 Musee Acta)、駒込倉庫(2015年、コミッションワーク)などで作品を発表している。



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